福祉人材を増やすためにFACE to FUKUSHIが挑戦していることとは?

~ミスマッチが若年層の早期離職の一因に~

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」によると、医療・福祉業界における新規大卒就職者の3年以内の離職率は38.4%と高い数値を示しています。ただ、全業界の新規大卒就職者の離職率も32.8%であり、福祉業界に限らず就職活動そのものに離職の原因となり得る課題があるかもしれません。

「入社前とイメージが違った…」「こんなこと聞いてなかった…」というような、企業側・事業所側の情報発信不足と就業者の情報収集不足によるミスマッチが離職の要因のひとつでしょう。

最近ではインターンシップを通じて、入社前に仕事体験ができる機会を設けたり、採用担当者に質問する機会をつくったりするなど様々な取り組みを行っている企業が増えてはいますが、全ての企業において取り入れられているわけではありません。

そんな中、一般社団法人 FACE to FUKUSHIは、次世代の福祉を担う若手人材の採用を支援しています。
今回は、FACE to FUKUSHIの共同代表である河内祟典さんと事務局の近重有貴さんにインタビューを行い、同法人の取り組みをご紹介します。福祉業界で就業を考えている方はもちろん、採用や職員の離職に関して悩む福祉事業者の方々も、ぜひご覧ください。

    

~福祉業界の採用力向上を支援、対話を主体とした情報伝達へ~

昨今、法人や事業所と就職希望者の出会いは、ウェブが主流となっています。ウェブでは様々な情報を手に入れることができますが、法人・事業所側からの一方通行の情報発信となることが多く、就職希望者が本当に必要としている情報を得られない場合もあります。

以前の福祉業界の採用は、大学や専門学校などの福祉系学科を卒業した学生の採用がほとんどでした。そのため、ウェブなどでの一般公募に際し自社の魅力をまだ言語化できていなかったり、採用のパンフレットなど広報ツールを持っていなかったりするなど、採用に関して課題を抱える事業所もありました。

そんな中、福祉人材不足という課題の解決に向き合うため、福祉業界の採用力向上を支援し、情報発信の手法から変えていこうと活動しているのが、FACE to FUKUSHIです。活動の一つである新卒学生向けの福祉就職フェア『FUKUSHI meets!』をご紹介します。

    

~『FUKUSHI meets!』福祉事業者とウェブで触れ合えるイベント~

以前、ある就職フェアに参加した際、福祉業界の法人の多くが事業紹介やパンフレットを工夫しておらず、業界や法人の魅力を学生に伝えきれていない状況に危機感を覚えたという共同代表の河内さん。そこで、学生と対話しながらお互い納得して就職先を決めてもらうために、福祉就職フェア『FUKUSHI meets!』を立ち上げました。

一方通行の事業説明ではなく、学生と対話をしながら双方のコミュニケーションを図ることを大事にしていることが特徴です。また、単に参加法人・事業所へ人材獲得の場を提供するだけではなく、「どのように法人全体の魅力を伝えていくのか」ということまで、事前にレクチャーを行っています。

今年の『FUKUSHI meets!』は、2021年2月から6月にオンラインで開催されます。3月4日現在、延べ130団体、744名もの学生が参加しています。

初日の2月15日には、西日本エリアの高齢者介護・障がい者福祉の事業所が15社ずつ、また、学生は138名参加しました。

イベントが始まる前には、各出展法人が事前に録画したプレゼン映像が流れました。事業の説明をするだけではなく、法人の雰囲気、社風やビジョン、どんな人が働いているかなどが伝わるように工夫がされていました。

オープニングでは、リレープレゼンと題して、各法人が30秒で自社をアピール。採用担当者だけでなく、若手の職員や内定者など、より身近に感じられる職員も参加しており、「この法人のブースに行ってもっと話を聞いてみよう」と思わせる内容でした。わずか30秒という短い時間にもかかわらず、それぞれに込められた想いが伝わるプレゼンでした。

その後は、学生たちがウェブ上で各ブースに訪問し、“対話”をしながら法人のことを深く知っていく時間が設けられ、一方通行ではないコミュニケーションにより、ウェブから収集する情報だけでは伝わらない福祉のリアルを知る場となっていました。

『FUKUSHI meets!』 は学生だけでなく、参加する法人にとっても重要なイベントです。2005年より就職フェアを開催する中で、当初10社しかいなかった参加法人も年々増えています。会場では法人同士の関わりも生まれ、共同でワークショップをしたりお互いの法人の情報共有をしたりするといった横のつながりも出来た、と河内さんは言います。
就職フェアというと他の法人と競合するようなイメージがあるかもしれませんが、協働して福祉の魅力を伝えたいという意思が法人を繋げているのです。

また、今年は全日程オンラインでの開催であるため、地方の法人にとっても追い風であると河内さんは言います。各法人の特徴や雰囲気を伝えるライブ中継も可能になり、全国から参加する多様な学生を確保できるチャンスが高まっています。

法人にとっては、単に仕事内容や雇用条件を伝えるだけでなく、法人のビジョンや社風を現場から届けることができる。学生たちは気軽に質問して、ほしい情報を収集できる。そして法人同士で採用に関する情報や好事例を共有したりすることで業界としても成長していく。

『FUKUSHI meets!』は、ミスマッチの原因となるコミュニケーションロスや情報不足を減らし、不本意な早期離職を防ぎ、福祉人材を増やしていくことに挑戦しています。

実際にFUKUSHI meets!に参加した学生が感想を語るビデオをYouTubeに掲載しています。ぜひ、ご覧ください。
参加した先輩の感想|FUKUSHI meets!オンライン

    

~福祉の魅力を伝える取り組み~

FACE to FUKUSHIは、就職支援だけではなく、「福祉の未来をより良くしていく」という理念に基づき多角的な取り組みを行っています。その一つが福祉に対するネガティブなイメージの払しょくです。
就職・転職活動の支援だけではなく、学生がボランティア活動できる場の創出や、社会福祉法人やNPO団体と協力しながら現場の情報を発信しています。
人と人とが支え合う共生社会に不可欠である福祉の素晴らしさを伝え、福祉に興味を持ってもらえる活動をしています。

近重さんは「(福祉業界の仕事は)一つの型にはまったものはなく、課題をどうとらえてどう解決していくのか考えていくクリエイティブな仕事である」と言います。正解がない課題に向き合うからこそ悩むこともある一方、別の見方をすれば工夫のしがいがあるのが福祉という業界です。そのような魅力や仕事のやりがいを今後も発信していきたいと意気込んでいます。

    


ミスマッチを防ぐことで不本意な離職を減らしたり、福祉の魅力を発信して福祉で働きたい人々を増やしたりすることで、福祉人材不足という課題に立ち向かう、FACE to FUKUSHIの取り組みをご紹介しました。

今後は、就業中の職員に対する支援も視野に入れ、「福祉で働く人が繋がるコミュニティを作る」という新たな事業も計画中です。組織の枠を超えた外部のコミュニティをつくることで、同じ職場内だと話しづらいことでも相談したり、課題解決に向けた取り組みの共有を行うことを目指しています。

一般社団法人FACE to FUKUSHIの詳細については以下のリンクをご覧ください。

一般社団法人 FACE to FUKUSHI

FUKUSHI meets!

フクシゴト:福祉で働きたい大学生のためのしごと情報サイト

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