以前の記事では、未経験や無資格でも介護職として働き始めることが出来ることを紹介し、求職者に対して開かれている介護業界の門戸の広さをご紹介しました。
一方、既に介護の現場で働いている人たちが、どのようなキャリアを歩むことが出来るかについては、一般的に余り知られていないようです。
この記事では、介護職のキャリアパスとして以下の三つを紹介し、その多様さを説明します。
キャリアパス①:組織内でのキャリアアップを目指す
キャリアパス②:研修や資格取得等を通じて、スキルアップを目指す
キャリアパス③:スキルの幅を広げ、他の職種を目指す
これから介護職にチャレンジしたいと思っている方はもちろん、現在、介護職として働いていてキャリアについて考えている方も含め、是非読んでいただければと思います。
こちらは介護施設や事業所という組織内でのキャリアアップを図り、管理職を目指していくというキャリアパスです。
一般的な介護職として利用者への介護サービスの提供に習熟した後は、“介護主任”として介護職を取りまとめる現場リーダーを務めようになり、さらには、“施設長”、“事業所長”として事業所全体のマネジメントを担うようになります。
職階が上がり管理職となっていくと、様々なスキルが求められます。例えば、事業所の運営方針・ビジョンの策定、介護職員の採用や教育、利用者やそのご家族との関係構築、外部に向けた広報や営業、事業所の収支管理などが挙げられます。
組織内でキャリアアップしていくことで、上記のようなスキルの習得にチャレンジし、キャリアを構築していくことも、介護職では可能となっています。
介護職のスキルアップについては、以下の三つに分けてご紹介します。
(A)研修を受けて知識・スキルを増やす
(B)介護に関する資格を取得する
(C)特定の領域に強みを作る
(A)研修を受けて知識・スキルを増やす
以前の記事では、入門的研修、生活援助者研修、介護職員初任者研修の3つをご紹介しましたが、“実務者研修”と呼ばれる研修もあり、介護職として必要な介護過程の展開(利用者の状況把握、介護計画の立案と実践、実施後の評価など)や認知症等について学ぶことが出来ます(研修時間は450時間。初任者研修を受講済みの場合は130時間の受講が免除)。
この研修を修了すると、例えば、訪問介護事業所において提供するサービスの計画を立てる“サービス提供責任者”になれるなど、自らの役割や業務の幅が広がります。
また、実務者研修の他にも、例えば、移乗介助等の実技に特化した研修において特定のスキルを高めることも出来ますし、介護職が開催しているワークショップやコミュニティーに参加することで自らの視野を広げることも可能です。
このような多様な機会を活かすことで、自分の成長の道を探すことが出来るんですね。
(B)介護に関する資格を取得する
実務や研修で培った知識やスキルを基に資格にチャレンジすることも可能です。介護に関する代表的な資格として“介護福祉士”という国家資格がありますが、この資格を持っていると高度な知識・技術をもつ介護の専門家として認識されるようになります。
介護福祉士になると、介護サービスを自ら提供するだけではなく、利用者やそのご家族から、介護に関する幅広い事項に関して相談に乗り、助言を行うことも重要な役割の一つとなっていきます。
また、公益社団法人日本介護福祉士会のホームページによると、介護福祉士の専門性について、「利用者の生活をより良い方向へ変化させるために、根拠に基づいた介護の実践と共に環境を整備することができること」とされています。
上記を達成するために、他の介護職へ「自立支援に向けた介護技術等、具体的な指導・助言を行う」「福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない」という役割も記載されており、他者との関わりの中で介護サービスを提供する、総合的な力が必要とされる職種と言えるでしょう。
また、“認定介護福祉士”という民間資格*も2015年12月から認証・認定が開始され、介護福祉士の上位資格としてチャレンジすることが出来るようになりました。
*「一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構」により認証・認定
上記のように研修を経て資格を取得することで、知識・スキルがレベルアップして、より高度で幅広い業務を担えるようになり、介護を担うコア人材として活躍することが出来るようになるでしょう。
※「介護福祉士養成施設等における「医療的ケアの教育及び実務者研修関係」」(厚生労働省ホームページ)の「制度改正の概要」資料を基に作成
(C)特定の分野に強みを作る
資格を取得するというスキルアップの方向性の他にも、特定の領域に特化した介護施設などで働くことで、その領域の専門性を高めていく方向性もあります。
例えば、“認知症高齢者グループホーム”では、認知症の利用者と接する機会が多いため、特に認知症ケアの専門性を磨くことが可能です。
その他にも、医療依存度が高い人が入居する“介護医療院”という施設など、それぞれに専門領域のある施設が存在するため、その人自身が突き詰めたい分野においてスペシャリストになることも出来ます。
自分が学びたい分野や貢献したい分野を自分なりに定め、目標を立て、スキルアップを目指すことが出来るという点も、介護職の魅力の一つかと思います。
介護職として活躍した後には、身につけた介護の知識を横展開して、介護に関わる様々な職種にチャレンジすることも考えられます。例として、介護支援専門員(ケアマネジャー)や生活相談員といった職種があげられます。
介護職からの職種変更で多いのが、介護支援専門員(ケアマネジャー)です。利用者が必要な介護サービスを受けられるようにケアプラン(サービス計画書)を作成することが主な業務ですが、利用者が事業所を見つけるために情報を提供したり、利用者と事業者のやり取りの調整なども担います。介護支援専門員として活動するためには、介護福祉士などの国家資格の保有者として5年以上(従事日数900日以上)の実務を経験したうえで、介護支援専門員実務研修受講試験に合格する必要があります。
生活相談員は特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどの施設において、入所・退所関する相談やサービス利用に関わるあらゆる相談を受ける仕事です。施設との調整や手続き、地域との連携などの役割も担うため、介護職の経験があると役に立つ職種です。
また、その他にも社会福祉法人で働いている人では、障がい者のケアに関する資格や保育士の資格などを取得し、介護職としての経験を活かして活躍している人も多くいます。
以上、介護職におけるキャリアパスを3つご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
このように多様なキャリアを実現出来ることが、介護職の魅力と言えるかもしれません。