皆さんご存知の通り、介護職は高齢者を支援するプロフェッショナルな仕事です。そのため、「介護のしごとって、資格や経験がないと始められないんじゃないの…?」と思っている方は多いかもしれません。
実は、介護のしごとは無資格や未経験であっても始められるのですが、ある調査によると、その事実は介護職でない一般の人には、3割弱しか認知されていませんでした*。
*「介護職非従事者の意識調査(株式会社リクルートキャリア、2019年)」によると、「資格の有無にかかわらず、未経験からでもスタート出来る職種である」という事実について、介護職非従事者の認知率は29%であった。
この記事では、無資格や未経験でも始めることのできる介護のしごとについてご紹介したいと思います。
介護のしごとには、以前の記事でご紹介したように利用者の自宅を訪問してサービスを提供する”訪問サービス”と呼ばれるもの以外にも、たとえば下記のサービスがあります。
施設サービス:(中長期的に)施設に入居する利用者にサービスを提供するもの
短期入所サービス:一時的に施設に宿泊する利用者にサービスを提供するもの
通所サービス:日中、自宅から施設に通う利用者にサービスを提供するもの
これらはいずれも施設において提供されるサービスであり、資格を有する介護職の指導・監督の下に行う場合に限り、介護の資格が無い人でも介護を行うことが可能です。
無資格、未経験の人でも、通常通りシフトに入り、資格のある介護職と同じようにしごとを行うことになりますが、先輩からの指導、サポートを受けながら介護のスキルや知識を修得出来ることも特徴の一つです。
通所サービスは、比較的要介護度の低い利用者が多く夜勤もないため、初めて介護の現場で働く人にもチャレンジしやすいと言えるでしょう。
また、施設サービスは夜勤があることもあり、無資格、未経験で仕事にするには少々ハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、難易度の高い身体介護のスキルなどの介護に必要なスキルや知識を、業務を通じて習得することが出来るため、介護のしごとの基礎を作る上では間違いなく役に立つ経験になると言えます。
なお、無資格で働けるといっても、一定期間内に資格を取得することを前提とした採用となっているため、長期間にわたり無資格の状態が許容されるというわけではないことには注意が必要です。
「資格を取得する必要がある」といっても焦る必要はありません。
介護職の魅力として挙げられるのが、「働きながら資格を取得することが可能」な点です。実際に制度として資格取得を支援してくれる法人も多くあり、それらを活用して資格取得することでスキルアップを図り、業務内容の幅を広げていくことが出来ます。
それでは、介護のしごとを始めたばかりの人はどのような研修を受けて資格を取得し、スキルアップを図ることが出来るのでしょうか。この記事では三つの研修をご紹介します。
入門的研修は、介護未経験の方向けの基本的な知識、スキルを身につけるための研修です。最も初歩的な研修であり、21時間で研修を修了することが出来るので、気軽に受講することが可能です。家族介護のための勉強としてもお勧めの研修です。
生活援助従事者研修は、介護のしごとのうち生活援助(詳細はこちら記事を参照)について学べる研修です。この59時間の研修を修了すると、訪問介護員(ヘルパー)として、生活援助に関わるしごとに従事出来るようになります。
介護職員初任者研修は、在宅・施設で働く上で必要となる基本的な知識・技術と、それらを実践する際の考え方のプロセスについて学べる研修です。130時間の研修を修了すると、ヘルパーとして生活援助だけでなく、身体介護についてのサービスも提供出来るようになります。この研修を終えると、介護の基本的な業務が遂行出来るようになるとされており、介護のしごとを始めた人にとっては一つの道しるべとなるかもしれません。
介護サービスの種類と研修の関係性
以前の記事でご紹介した在宅の高齢者にサービスを提供する訪問介護員(ヘルパー)は、利用者の自宅という、他の介護職等の監督者がいない状態で業務をする必要があるため、上記のような研修を修了することで業務を実施出来るようになります。
経験がない状態でいきなり介護業界に飛び込むには、やはり勇気がいるのも事実だと思います。そこでご紹介したいのが、”介護助手”と呼ばれる職種です。施設によっては、”介護補助”、”介護サポーター”と呼ばれているかもしれません。
この介護助手は、介護施設等において、介護に該当しない比較的単純な周辺業務を実施することで介護職員をサポートする職種のことで、無資格、未経験でも担うことが出来ます。
具体的なしごとの内容としては、施設の掃除、ベッドメイキング、食事の配下膳、リハビリ用具の準備や片付け、移動時の声掛け・誘導などが挙げられます。もちろんこれらの業務を最初から全て担うわけではなく、自分が出来るものから、徐々に自分のしごとを拡げていくことが可能です。
また、主に施設における介護サービスでは、レクリエーションや利用者の話し相手、趣味活動のお手伝いといった、利用者とのコミュニケーションも重要なしごとの一部となっています。
実は、介護職でない一般の人が思っているよりもずっと、実際の介護現場においてはレクリエーションのスキルが重要とされています*。実際、介護の現場からは、「介護職員や介護助手の持っている、音楽や習字、折り紙等の趣味のスキルが非常に重宝されている」という話もよく聞かれることです。
介護の専門的な知識・技術を持っていなくても、その人の持っているコミュニケーション能力や趣味のスキル、人生経験などを、入居者とのコミュニケーションに活用しながら働くことも出来るんですね。
介護助手といった、よりカジュアルな形で介護に関わる働き方でも、実際に働いている人からは、「自分のしごとが社会貢献活動につながっている実感を得られる」という声も聞きます。皆さんも是非気軽にチャレンジして、介護のしごとの現場での活躍の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
*PwCコンサルティング合同会社が2020年11月6日~11月7日に実施した現職者1,030名、一般(現職者、医療福祉職、就職・転職の意志決定に影響を与えうる職業(学校の進路指導教員、人材エージェント等)の方を除く)5,152名を対象とした調査結果より。「あなたの立場から見て、介護の仕事に特に必要だと考えるスキルを3つまで選択して下さい」という質問に対して、「レクリエーション・アクティビティ」を選ぶ一般の割合は5.8%であったのに対し、「介護の仕事において、あなたが特に必要と考えるスキルを3つまで選択して下さい」という質問に対して同選択肢を選ぶ現職者の割合は19.8%であった。
以上、資格や経験が無くても働ける介護のしごとのご紹介でしたが、いかがでしたでしょうか。次回の記事は、今回の記事で少しだけ紹介した介護に関する資格やキャリアについて取り上げる予定ですのでご期待下さい!
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