福祉業界で働く人たちを支える“今までにない”研修

◆最前線で働く福祉・介護従事者を応援

多くの人が“働く”ということに対して、様々な悩みを持っていると思います。例えば、壁にぶつかったとき、「自分の考えは合っていたのだろうか」「ほかの人はどういう行動をとっただろうか」「仕事のやりがいが見いだせなくなってしまった」など…。そんなとき、同じ職業やポジションで働く人の意見や考えを聞く機会があれば、早期に悩みを解決できたかもしれません。

この記事で紹介する日本ソーシャルワーク教育学校連盟(ソ教連)が主催している『コミュニティにねざした福祉人材を養成する研修(こふく研)』では、福祉に携わる方々のそのような悩みや思いに応えるような取組が実施されていました。また、研修では、福祉の現場で活躍されている方の声を聞いたり、アニメや映画の名台詞を用いて福祉の仕事について講義形式で伝えたりと、視聴者が楽しく受講できるような工夫がされていました。
本記事では研修の目玉である「焚火トーク」の内容を中心に、オンライン研修『こふく研』の詳細を紹介します。

   

◆ふくしの仕事を語る〜魅力・やりがい、そして悩み

焚火トークでは3つのテーマについて、実際に福祉の現場で活躍されている3人による対談が行われました。一つひとつのテーマについて、福祉学校の教員など有識者の方々が別の場所にあるスタジオから気づきや感想をコメントする構成になっており、3人の対談内容が整理された形で視聴者に伝わるよう工夫されていました。

一つ目のテーマ「ふくしの仕事を語る〜魅力・やりがい、そして悩み」では、3人が福祉職に就いたきっかけ、福祉職のやりがい・悩みを共有しました。

福祉職のやりがいや魅力について、3人は自分自身の言葉で次のように語っていました。
「福祉の仕事の魅力は、人との関わりがあること、相手と喜怒哀楽を共有できること。現場での利用者との他愛のない会話が楽しくて仕方ない。喜び、楽しさを共有できたときにやっていてよかったと思う」(鈴木さん)
「利用者やその家族の目標とする生活に向けてお手伝いができること。目標を達成できた時はともに喜べる」(山口さん)
「身体に障がいがある人、そのご家族のための温泉宿を経営している。一般の旅館やホテルだと宿泊することが難しい方に、『こういう施設があって良かった』と喜んでもらえることが自分の喜びになっている」(塚田さん)

現在の職種や福祉職に就いたきっかけは異なる3人。仕事を通じて関わっている相手の喜びや目標の達成が、自分自身のやりがいや仕事の魅力につながっていると、共通して語っていたことが印象的でした。

また、コロナ禍における悩みについても共有されていました。例えば、山口さんは、「コロナ禍で利用者の楽しみ、イベントが減っており、どう利用者に楽しんでもらうか悩んでいる。福祉職として働く人々もプライベートで様々な自粛をしていることから、私自身を含めた事業所の職員のモチベーション維持が大変」という悩みについて打ち明けていました。
昨今、同じような悩みを抱えている方も多いでしょう。自分だけではなく同じような悩みを持っている福祉職の仲間がいることを知り、勇気づけられた方も多いのではないでしょうか。

    

焚火トークの参加者

左から、鈴木 和也さん(社会福祉法人 同愛会 障害者支援施設 光輝舎 相談支援専門員・社会福祉士)、塚田翔伍さん(社会福祉法人 同愛会 なかが和苑 支配人・社会福祉士)、山口 綾佳さん(社会福祉法人 同愛会 多機能型障害福祉サービス事業所 ひかり 生活支援員・社会福祉士・介護福祉士・保育士)

   

◆地域におけるふくしの役割と重要性

二つ目、三つ目のテーマである「地域での自分の役割 〜連携と協働~」、「災害が起きたとき 私たちは、なにができるか」では、3人が地域連携や防災のために意識し、取り組んでいることが語られました。

例えば、塚田さんは「日帰りでも温泉を楽しめる施設なので一般の人の利用も多く、地域の繋がりもできやすい。その特徴を使って地域の人が活躍できる場を提供していきたい」「地域の人たちの繋がりを深めることがより良い地域社会をつくるために重要であり、そのネットワーク構築のハブになることも福祉の仕事」と語っていました。
また、山口さんは「(地域内で)業種や組織を超えて連携し、利用者を支援していくことで支援の幅も広がるし、利用者の方々に有益な情報が提供できる」「福祉はたくさんの仲間と共に人を支援することができる素敵な仕事。単純に介助・ケア業務だけではなく、地域づくりを行っていく上で広がっていく輪が魅力である」という意見を述べていました。

このような現場の声に対し、スタジオの有識者からは「連携と聞くと組織間の連携や専門職同士の連携を想像する人が多いが、地域の人と人とのつながりも連携になる。福祉に携わる人が持つリソースを活用しながら、地域の様々な人とつながることこそが福祉の面白さ、魅力だ」というコメントが述べられていました。
また、「普段から施設と地域の方の間で連携が取れていることで、有事の際にお互いを気に掛けるコミュニケーションが生まれる。地域の人の孤立を防ぐことが最大の防災対策ではないか」 「福祉の仕事は、地域の人たちとの関係をつくり、その人たちの暮らしを守ることが根本である。そういった福祉の活動そのものが防災につながっている」というコメントもあり、地域内での人と人とのつながりの創出は、防災の観点からも重要な役割を担っているという説明がありました。

   

   

自分自身の持つ施設や人脈などを、様々な形で地域の方々に活用してもらおうと活動を続ける3人のお話から、地域社会への貢献という福祉の仕事の持つ魅力や重要性を再認識することができました。
福祉を担うソーシャルワーカーとして、自分が地域社会にどのように役に立っていくのかを真剣に考えて活動する熱い志を持つ“同志”の存在を、多くの福祉・介護従事者に伝えることができたでしょう。3人の対談からは、多くの視聴者が、福祉の仕事の多彩な魅力や意義など、新たな“気づき”を得ることができたのではないでしょうか。

   

      

◆気づきを与え、印象に残る研修をつくっていく

ソ教連は福祉業界で働いている人や、これから福祉業界を目指す人に対して、福祉の仕事の魅力、意義、面白さなど新たな“気づき”を与えていく様々な活動を行っています。今回は、その取組の一つとして、1月末に行われた「こふく研」についてご紹介させていただきましたが、今後も新しい形の魅力的な研修を企画していくとのことです。こうした活動は福祉業界で働く方を勇気づけ、これから働こうと考えている人たちの背中を後押ししていくでしょう。

日本ソーシャルワーク教育学校連盟(ソ教連)
http://jaswe.jp/index.html